ヘッドホンの歴史


いつでもどこでも音楽を楽しむことができるヘッドホン。その起源は1890年代にまでさかのぼることができます。

1890年代 自宅で音楽を楽しむ装置 エレクトフォン

まだラジオ放送すらも開始されていない1890年代。当然音楽は生演奏を楽しむものでした。楽器にも電気は用いられておらず、オーケストラなどの演奏をコンサートホールで聴くというのが、音楽を楽しむ唯一の方法でした。

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そんな中、イギリスでエレクトロフォンという有線放送が生まれます。コンサートホールや劇場、教会などに設置されたマイクが音声を拾い、当時普及が進んでいた電話線に乗って自宅にまで届き、ヘッドホンの原型になったレシーバー を通して聴くという仕組みで、初めて家にいながら音楽を楽しめる環境が生まれました。

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しかし、当時の価格で年額5ポンド(現在の価値で3000ポンド:約52万円)という高額な利用料金の為、利用するのは一部の富裕層に限られ、あまり普及しませんでした。

1920年代 ヘッドホンの原型の誕生

アメリカ・ユタ州の電気技師ナサニエル・ボールドウィン氏が、2台のレシーバーをヘッドバンドに取り付けたものを考案。これが現代のヘッドホンの原型となりました。作った切欠は、礼拝堂の説教の声がよく聞こえない不満からだったそうです。

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このヘッドホンに目を付けたのがアメリカ海軍でした。轟音の轟く戦場で、音をかき消されることなく指令を伝達できる事が買われ、100台のヘッドホンを発注。実際に戦場で使用されました。

数年後、ボールドウィン氏はラジオ会社を設立。ヘッドホンの量産化を始めました。

1930年代 ダイナミック型ヘッドホンの誕生

スウィング・ジャズが全盛期を迎えた1930年代、エレキギター等の電気を使った楽器が次々と発明されました。1937年、ドイツのオイゲン・バイヤー氏が世界初となるダイナミック型ヘッドホンを発明。「DT48」を発売しました。

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発明から80年以上経った現在でも基本原理は変わらずに受け継がれています。同氏が設立した音響機器メーカー「beyerdynamic」は、現在でもヘッドホンやマイクなどの音響機器を製造し続けているヘッドホンの老舗メーカーです。DT48も、2012年まで生産され続けたロングセラー商品です。

1950年代 音楽用のステレオヘッドホンの誕生

1958年、それまでは主に通信のために用いられていたヘッドホンでしたが、アメリカのジョン・コス氏が世界で初 めて開発したステレオヘッドホンの登場により、純粋に音楽を楽しむためのヘッドホンが誕生しました。

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「LPレコード」と「ロックンロール」が生まれたのもこの時代。2度の世界大戦が終わって好況に沸くアメリカで、ヘッドホンは一般大衆の生活へと浸透して いくことになります。

1980年代 音楽を外で楽しむ ウォークマン誕生

1979年7月。ソニーが発売した「ウォークマン」は、それまでは自宅でしか楽しめなかった音楽を、外に持ち出すことを可能にしました。

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いつでもどこでも好きな音楽を自由に楽しむことができるウォークマンは瞬く間に大ヒット。そのコンセプトは、後の世のCDウォークマンやMDウォークマン、そして現代のiPodなどにも変わらず受け継 がれています。

ウォークマン成功の要因はいくつもありますが、その1つは「ヘッドホンをセットで販売したこと」と言われています。このウォークマンのために、ソニーでは軽量の新型モデルMDR-3を開発。従来よりも飛躍的にコンパクトで軽量なボディはウォークマンのコンセプトをそのまま具現化したものでした。

1979年の発売から現在まで、ウォークマンシリーズの総売上台数は2億台を大きく上回っています。

2000年代 iPodとiTunes Storeの誕生

1990年代になると音楽はアナログからデジタルに移行し、音楽はデータとして扱うようになります。従来のカセットテープはPCのハードディス クやメモリーカードに置き換えられ、コンピューターで曲のライブラリを管理することが一般的になり始めます。

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2001年、AppleからiPodが発売されます。「自分の ミュージックライブラリをポケットに入れて持ち歩く」iPodは熱狂的な人気とともに迎え入れられました。音楽データを販売する「iTunes Store」もこの時期に始まりました。